とあるXの戯言

色々社会不適合者の話

Xジェンダー当事者でその他色々社会不適合者による、どうでもいい話たち。

みんな『男であれず、女になれない』読んだ方がよい(強めの推奨)

本の感想です。
どうやら今年は自分の中の読書期間が少し長かったようです。

もう終わりましたけど。

最初に何の説明もなくこの本の概要のみ知っているけどまだ読まれていない人にネタバレにならない程度に感想をお伝えすると、

まじすぐ読んだ方がよい。

以下、逆に全くこの本を知らない人にもなるべく読んでいただきたいと思うので(お節介の押し売り)、私の感想より前に色々この本や著者の紹介をさせてください。

いつも前置き長いけど、今回もやはり長いよ。
大丈夫、今回は最終的にネタバレ要素にやっぱり言及してしまうことになるので、私の個人的な感想文に入る前にはワンクッション置きます。

この本と著者について

「テメーの話はどうでもいいからさっさと概要を教えろよ」という人向けに、まずは小学館の本の紹介ページへのリンクを貼ります。

このリンクに書いてありますけど、

この本は第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞した作品です。

まあつまりどこぞの誰か知らん私みたいなクズが書いた文章でなくて、ちゃんとプロにも評された素晴らしい本というわけです。
よって、読んで損ということはないと思います(上から目線な表現になってしまって恐縮ですが全くそのつもりはありません、ひとえに私のボキャ貧が招いている事態です)。

内容としては、セクマイであるところの著者の今までの半生を書いた自伝です。

というと、「いくら一定の賞を得たとはいえ、著者と自分に接点がないと結局読破できないのでは?」という人もいると思います。

昨今はありとあらゆるエンターテイメントが転がっているし、無課金で結構遊べるし、本読む暇ないとか。
かく言う私もすぐそういう言い訳して読書を怠るので。

だがそこで諦める必要なし!!朗報とはこのこと!!
LGBTERというセクマイ当事者およびアライのライフストーリーをインタビューしているサイトで、著者の半生をタダで読めてしまうのです。
こちらからどうぞ。

ていうか、私自身も実はこのサイトからこの本を知りました(本読むスイッチ入ってなかったから、実際読み始めるまでの期間はかなり空いたけど)。

話逸れますけど、LGBTERのサイト自体も読み物としてお薦めです。
このサイトも自力で見つけたわけではなくて、お世話になっている人の紹介で知ったんですけどね。
かなりのハイペースな更新頻度のうえに、1人分のインタビューの文字数が結構あるので読むのにそこそこ時間かかりますが(読み応えあるのによくタダで読めちゃうよな)、まあでもぜひ。
LGBTだけじゃなくて色んなセクシャリティの人のインタビューが載っています。
(あと知り合いやお世話になっている人のインタビューもちょっと載ってるんだよね……世間って狭いね)

話を戻して。
このインタビュー記事を見ると、著者は”Transgender (MtX)”と記載があります。

そうです、あえてここまで著者のセクシャリティを明記しませんでしたが、

著者はXなのです。

だらだら書くのが得意なのでだらだら書きましたけど、つまりこの本はXジェンダー当事者の半生を自分自身で綴った本です。

そして私がこの本を読んだ動機は「X当事者にインタビューしておきながら、Xの詳細な半生をちょっとお金出すだけで読めるのに、何で俺今までこの本読んでなかったんだろう」と突然自分のやっていることの矛盾に、やっと気付いたからです。

と、まあ長らく書きましたが、以下ネタバレ注意の感想です。

本の感想(ネタバレ注意)

本の感想を記事にしておきながら先に言い訳するようで情けないですが、読書感想文とか昔から苦手でした。
よって、以降の文章も支離滅裂だと思いますが何卒ご了承いただきますよう。

どんな順番で何を書こうかと刹那悩んでみましたが、特に心に残っていることから順番に書こうと思います。

Xジェンダー……?

まず一番重要なことを忘れないうちに記載するけど、びっくりすることに

この本には「Xジェンダー」という単語は1つも出て来ません。

ひとっつも。

最早読み進めていて、「あれ、このお方Xなんだよね……?俺間違っちゃったかな……?」って不安にすら思いました。

LGBTERでも一応「MtX」の記載はあるからXに分類されても構わない程度には思っていらっしゃるかもしれないけど、Xへの執着心や帰属感はほぼないように思われます(記事のかなり後半にほんの少しXに触れていますけど)。
少なくとも、もう少しそういうものを感じていたら「世間ではこういう自認は最近Xジェンダーと呼ばれていて云々」程度の言及はあってよいと思うんですよね。

だから、あくまでXの一人としてではなくて、著者自身の本であるということですね。

きれいで、優しいけど、媚びない。

見出しそのままなんですけど。
きれいなんですよ、文章が。

価値ある文学の文章ってこういうことなんだなと思いました。
何だか自分まできれいな文章表現が出来そうな気すらしてきます。気のせいですけど。
どういう風にきれいなのかは、きれいな文章を書けない私は表現できないので、読んでください(爆)。

文章の端々からきれいさが溢れてて(ごめんなさい、私は駄文を晒すことしかできない人間なので「きれい」以外の表現が見つかりません)、読者に語りかけるようなところも多くあり、
大抵の読者はその感覚は分からないんだろうけど、多少なりともマジョリティよりはXの端くれとして著者の苦悩を理解しているつもりで、「ウンウンつらかったよね」なんて共感しているつもりでいました。

著者自身、共感してもらいたい、分かってもらいたいとは考えていないようです。
その点では読者に寄り添っていないと思います。
共感してもらえない、分かってもらえないのは重々承知のうえで、この本は始まるのです。

まあその辺りは、やっぱり実際に読んで実感して欲しいです。
私も最初は分かる分かるとは思っていたのですが、「なんか違うな?」と感じるところも正直多々ありました。
Xでも分かんないのなら、ましてマジョリティにはさっぱり訳分からないでしょうね。
(誤解を与えてしまいそうなので弁解すると、Xだから分かるなんてことはないと思っていますけど「有り得ない」「頭沸いてる」「甘えだ」という感想を持つことは、きっと極めて少ないと思っています。)

この本を読んで、Xってなかなか分かってもらえない存在だってことを、かなり忘れていたということに気付かされました。

ただ、「想像してください」と著者は度々読者に言います。

想像しなくなったら終わりだと。
ああそういうこと、分かりやすい文章読んで表面的に分かったフリするんじゃなくて、分からないなりに想像を巡らせることが大事なんだよね。
そういう感覚も忘れていたなあと反省しました。

治療なめてましたさーせん

冒頭で紹介した小学館のリンクでもLGBTERのリンクにもやはり目を引く内容として記載されているけども、著者は数年前に生殖器を摘出しています。
しかし、身体を女性化させたいわけでもなかったので、造膣したわけでもありません。

いや、これって特にセクマイが身近でない人からしたらものすごい衝撃的なことだとは思うんだけど、日に日にセクマイ当事者の話を聞いたり読んだり会ったりすることが増えている身としては

「あーうんうんそういう感覚の方なんですねハイハイ」

程度にしか最初は捉えてなかったんですね。
慣れって怖いね。

なめきってました。ほんとうにすみませんでした。

本の後半に手術後の苦労話が色々出て来るのですが、

まじ怖かった。

元々医療バラエティとかドキュメンタリーの手術の場面とかも見ると末端に力が入らなくなってしまうくらい「グロい」ものが苦手なため、
実はそのときかなりハイペースで電車内で読み進めていたのですが、息も荒くなってきて身の危険を感じたため、読むのをやめました。
その後は息が切れない程度に休憩を挟みながら小刻みに読みました。

特に出血の記述の「多い日の夜用ナプキンが2時間程度で真っ赤になる」というのは、女体持ちだったらその出血量がどのほどか分かりやすいと思います。
そのとき生理じゃなかったけどどっかから血の気引いたもんね。

本当に生半可な考えで身体を変えようとしちゃダメなんだな、と改めて痛感した次第です。
「どうせ不妊だろうし、子供育てるには精神の成長が随分前に止まってしまってるし、生理は面倒でつらいし、性腺とか諸々取っちまっていいかな」なんて非常に安易な考えをもっていたことを、今まで大変な思いをされて身体を心に合わせた方々に謝罪します。
俺にはそんな根性はないので、そんなことは少なくとも向こう10年は言いません。

その他、具体的に何が怖かったのかは怖くて書けないので、原文を読んでみて恐怖で震えてください。

最後に:興味もったけど今日これから本屋さんに行く暇はない人向け

とりあえずLGBTER読めば活字欲は満足するとは思います。

ところて、この記事を書くことにしたときに、とりあえずリンクバンバン貼っときゃいんじゃねと浅はかな発想のもと、まずついったを検索しましたら見つかりました。
あまりこういう方はアカウント持っていらっしゃらないかと思っていました。

https://mobile.twitter.com/fulllovesta_pei

しかし、正直申し上げて

賞をとった作家の割にフォロワー数少なくね?なりきりとかじゃね?

とすぐ何かと疑ってかかる質の私、リンク先のブログに飛んでみたが、

これは恐らく本人でいらっしゃる。

そう思ったブログはこちら。

だって、文章がやっぱりきれいだったから。

そもそも140字じゃ著者のきれいな文章には足りねえってもんだよな。
ていうことで、この記事で何回きれいって単語を使ったか知らねえけど、「どんだけきれいなもんなんだよ」と疑い深い方はブログをご覧になってはいかがでしょうか。



またまとまりなくぐだくだ長くなってしまったけど、言いたかったことは大体言ったと思うので、

とりあえずこんな文読んでる暇があったら本読んでください。

(ここまで読んでくださった方に大変失礼なことを最後に言い残すことにお詫びし、またお読みいただいたことに感謝申し上げます。)